『人魚姫』、『マッチ売りの少女』、『みにくいアヒルの子』、『はだかの王さま』・・・アンデルセン童話集には、誰もが一度は親しんだことのある有名なお話がたくさんあります。
今年の「子どもに見せたい舞台」は、有名で素敵なお話からあまり馴染みのないけれど美しいお話まで童話集より取り入れ、歌とダンスに彩られた音楽劇にしてお届けします。
宝箱からいくつもの「お話」が飛び出して皆さんの前で躍動することでしょう。この夏、童話の主人公たちが劇場で皆さんをお待ちしています。
子どもに見せたい舞台 vol.9

アンデルセン童話集

日程
8月8日(土)~16日(日)
このイベントは終了しました
会場
あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
原作
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
脚本・演出・音楽
糸井幸之介 (FUKAIPRODUCE羽衣)
振付
井手茂太
出演

深井順子 日髙啓介 鯉和鮎美 高橋義和 澤田慎司(以上、FUKAIPRODUCE羽衣)
平佐喜子(Ort) 谷山知宏(花組芝居) 榊原毅(三条会) 山崎皓司(快快) 井上みなみ(青年団)

  • 舞台美術 秋山光洋
  • 舞台監督 上嶋倫子 佐藤恵
  • 照明 松本永(eimatsumoto Co.Ltd.)
  • 音響 佐藤こうじ(Sugar Sound)
  • 衣装 竹内陽子
  • ヘアメイク 梶田キョウコ(レサンクサンス)
  • 宣伝美術 FLATROOM
  • 制作 坂田厚子 林弥生

企画・制作 NPO法人アートネットワーク・ジャパン


お問合せ:NPO法人アートネットワーク・ジャパン 03-5961-5200
公演スケジュール
8月 8
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13:00-
17:00-
19:00-
チケット

前売券 完売/当日券の発売:開演の60分前

チケット料金
子ども(小学生以下) 500円 中高生 1,000円
おとな〈前売〉1,500円〈当日〉2,000円(全席指定)
  • 3歳未満無料(0歳から入場可能/保護者のお膝の上の場合は無料・お席が必要な場合は有料)
  • 子ども・中高生は前売・当日ともに同一料金

受付開始:開演の60分前/開場:開演の30分前

何年も昔のこと、あたらしい服が大好きな王さまがいました。
王さまは持っているお金はみんな服に使い、一時間ごとに着る物を変えるほどでした。
あるとき、そこへ、二人のいかさま師がやってきました。
二人は服職人のふりをして王さまの元へやってくると、見たこともないほど美しい服を織ることができると言いました。そして、その服は、色や柄がすばらしいばかりでなく、自分の地位にふさわしくない者やばか者には見ることができないという、不思議な布でできている、というのです。
王さまは、たくさんのお金を与えて、この二人に服を作らせることにしました。
二人はすぐに、熱心に仕事にとりかかり始めました。ただし、手元には一枚の布もありません。服をつくるふりをしているだけなのです。
王さまは様子が気になって、いちばん正直ものの大臣に見に行かせることにしました。
二人の男は口々に仕上げ中の服について大臣に説明をするのですが、大臣には何も見えません。大臣は、これは大変なことになった!と思いました。「見えない」ということは、自分が大臣にふさわしくない、ということになってしまうからです。
王さまのところに戻った大臣は、二人の男が言ったことを、あたかも服が見えたような素振りで伝えました。
ついに、王さまがその服をお召しになるときがきました。二人の男はしきりに仕立てた服の素晴らしさを言い、王さまにとてもお似合いだとほめそやしました。
もちろん、王さまにもその服は見えません。
周りにいる大臣たちが口々に素晴らしい服だと言い出しました。けれど、誰も、何も見えていません。
王さまも大臣たちも、誰も見えないとは言えなかったのです。
そうして、王さまはその服を着て、お城の外へ行列を従えて、お披露目に出ていかれたのです。
行列をみた人々は口々に、王さまの服をほめたたえました。みんな服が見えないことがばれてはいけないと思っているのです。
その時、一人の小さな子どもが言いました。

「王さま、なんにも着てないよ!」

その純粋な子どもの言葉は、みんなの目を覚ましあっという間に広がりました。
王さまにも、その子どもの言葉が正しく感じられました。
けれども、行列をやめることもできず、なおさらもったいぶってお歩きになったのでした。

海の底のいちばん深いところに、人魚の王さまのお城があって、それは美しい人魚のお姫さまが、王さまとお姉さんたちと暮らしていました。
十五の誕生日、はじめて海の上にあがったお姫さまは、立派な船で誕生日をお祝いされていた、たいそう美しい若い王子さまに心を奪われてしまったのです。
そして、その王子さまの船が嵐に沈められてしまった時、お姫さまは、必死の思いで王子さまを助けたのでした。
お姫さまは海の中からそっと王子さまが目を覚ますのを見守っていました。間もなく若い娘が一人、王子さまがたおれているのに気がつきました。王子さまが目を覚ましたときそばにいたのは、人魚のお姫さまではなくその若い娘でした。お姫さまはたいそう悲しい気持ちになりました。
それから毎日、人魚のお姫さまは王子さまのことを思い続けました。そして、次第に、人間の世界に入ってゆきたいと思うようになりました。お姫さまは、思い切って恐ろしい魔女に相談してみることしました。
魔女は、お姫さまの魚のしっぽが人間の二本の足に変わる薬がある、と言いました。
しかし、その足で歩くには鋭いナイフで切られたような痛みを我慢しなければならず、さらには、ひとたび人間の姿になったならば、王子さまに心から愛されないと、最後は海の泡となってしまうというのです。それでもよければ、お姫さまの声と交換にこの薬をあげよう、と魔女は言うのでした。

人魚のお姫さまは、それでも人間になりました。

お姫さまは王子さまのそばで暮らせるようになりましたが、声をなくしてしまったので、王子さまを助けたのは自分であることや、王子さまをどれほど愛しているか、何ひとつ伝えることができないのでした。
そのうえ、王子さまは隣の国の王女さまと結婚することが決まってしまったのです。王女さまは、王子さまが命拾いしたときそばにいたあの若い娘でした。そして、そのことを王子さまはたいそう喜びました。
王子さまの真の愛を手に入れられないと、お姫さまは泡になって消えてしまいます。お姫さまを助けたい一心で、人魚のお姉さんたちが髪と引き換えに魔女から短刀を手に入れてくれました。
この短刀で、王子さまを刺せば、お姫さまは人魚に戻れて助かるというのです。
しかし、お姫さまは王子さまを刺すことができませんでした。
そして、海に飛び込んだ人魚のお姫さまの魂は、空気の精となって空にのぼってゆくのでした。

エンドウ豆が五つ、一つのさやのなかに並んでいました。
ある日、パチっとさやが割れて、五つの豆たちは子どもの手のひらの上にころげ出ました。
豆たちは、一粒ずつ豆鉄砲につめられて、それぞれ世界に飛び出してゆきました。
そのうちの一粒が、ある屋根裏部屋の窓の下の隙間に飛んでゆきました。
その小さな屋根裏部屋には、貧しい病気の少女が住んでいました。
お母さんは、娘がそう長くは生きられないだろうことをたいそう悲しんでおりました。
ある日、少女は窓のそばに、緑の芽が出ていることに気がつきました。
お母さんは「ちっちゃいエンドウ豆だよ。」と教えてくれました。その日から、少女には小さいお庭ができました。少女はエンドウ豆が育ってゆくにつれて、自分の病気が良くなっていくような気がして、一生懸命お世話をしました。
エンドウ豆は、美しい花をつけました。そして、少女は本当に少しずつ良くなっていったのです。お母さんは、その小さいエンドウ豆が、希望を運んできてくれたとたいへん喜んで、その花にキスをしました。
一方、別のエンドウ豆は、下水に落ちてたいそうふくらんでしまいました。けれど、そのエンドウ豆は自分が一番りっぱなエンドウ豆になったと思っていました。
下水はその考えに賛成してくれました。

アヒルのお母さんが卵を温めていると、次々に卵が割れてかわいいアヒルの子が飛び出してきました。
けれど、最後の卵から出てきたのは、たいそうからだの大きなみにくいアヒルの子でした。あまりに兄弟たちと姿が違うので、みにくいアヒルの子はいじめられました。そして、ついにお母さんアヒルにも見放されてしまい、逃げ出したのです。
みにくいアヒルの子は、どこへ行っても相手にされません。さまよい歩くうちに、猫とニワトリと住んでいるおばあさんの家に辿りつきました。アヒルの子は試しに飼われましたが、ここでも猫やニワトリに相手にされず、出ていくことになりました。
どこにも居場所のないアヒルの子に、とうとう冬がきてしまいました。アヒルの子は、厳しい寒さを、じっと、じっと耐えました。
ようやく、お日さまが暖かく輝き、美しい春がやってきたとき、アヒルの子はふと、翼を羽ばたいてみました。アヒルの子のからだは力強く空に浮かびました。そして、あるお庭の水の上に着いたとき、そのすみきった水のおもてには何が映っていたでしょう。そこには、みにくいアヒルの子ではなく一羽の立派な白鳥になった、自分の姿が映っていたのです。
その時、お庭に子どもたちがやってきました。そして、新しい白鳥をみつけると口々に「なんて若くて美しい白鳥だろう。一番きれいだ!」と言いました。
かつてみにくいアヒルの子だった、その若い白鳥は、心から幸せを感じたのでした。

たいへん寒い日でした。一年のいちばん最後の日です。
一人の少女が裸足でマッチを売っていました。しかし誰も買ってはくれません。少女は寒さに凍えて、家と家のすき間にうずくまりました。
少女はあまりの寒さに、マッチを一本すりました。するとどうしたことでしょう。目の前に大きなストーブが見えました。しかし、少女がもっとよくあたたまろうとすると、ストーブは消えてしまいました。マッチが燃えつきてしまったのです。
少女はもう一本マッチをすりました。次は、ご馳走ののったテーブルが見えました。しかし、ご馳走に手が届きそうなところで、またマッチは消えてしまうのです。
もう一本マッチをすりました。今度は、大きなクリスマスツリーの下に、少女はいました。飾られているたくさんのろうそくへ手を伸ばそうとしたところで、マッチの火は消えてしまいました。
少女はさらに一本マッチをすりました。今度はなつかしい、もう死んでしまったおばあさんが見えました。少女は、おばあさんに抱きつきました。そして、おばあさんが消えないように、もっとたくさんのマッチをすりました。あたりは昼間のように明るくなりました。そして、少女はおばあさんの腕に抱かれながら天国へ上っていきました。
あくる日、町の人々は、冷たくもう動かなくなってしまった少女をみつけました。少女は、手に燃えてつきてしまったマッチを持ち、そしてその口もとは、ほほ笑んでいました。

今回、アンデルセンの童話を舞台にするにあたり、改めてたくさんの作品を読んでみました。
すると、この話はアンデルセンが書いたんだ!この話もアンデルセンなんだ!と、なんとなく知っている有名な童話の作者が実はアンデルセンだったということがたびたびありました。
どうしてアンデルセンの作品は多くの人の心を惹きつけるのでしょうか?
僕も子どものころから、知らずにアンデルセンのお話に触れ、心惹かれていました。今思えば、そこに暗さや悲しさ、大人っぽい何かを感じていたからだと思います。子ども心に、読んじゃいけないものを読んでいるような、でも読みたいような、不思議な気分がありました。
そして、大人になって改めて読むと、子どもの純粋さや、やさしさを思い出させてくれます。子どものころに感じていたであろう、世界の美しさみたいなものを蘇らせてくれるのです。
子どもはまだ持っていないもの、大人はもう失ってしまったもの、その両方があるからアンデルセンの作品は多くの人に愛されるのだと思います。この舞台も、そんな作品になればと思っています。

− 糸井幸之介

糸井幸之介

劇作家・演出家・音楽家。2004年に旗揚げされたFUKAIPRODUCE羽衣の全作品で作・演出・音楽・美術を担当。演者が歌い踊る、短いシーンの連続で構成された独特の作風を“妙ージカル”と称し、劇中で多用されるオリジナルの楽曲は、韻を踏んだ歌詩と耳に残るメロディーで高い評価を得ている。世田谷区芸術アワード“飛翔” 2008年度舞台芸術部門受賞。第14回公演「耳のトンネル」にて、CoRich舞台芸術まつり!2012春グランプリ受賞。

URL http://www.fukaiproduce-hagoromo.net/

photo Mina OGATA

井手茂太

振付家・ダンサー。1995年にダンスカンパニー「イデビアン・クルー」を旗揚げ。既存のダンススタイルにとらわれない自由な発想で、日常の身振りや踊り手の個性を活かしたオリジナリティ溢れる振付手法で注目される。カンパニーでの作品発表に加え、演劇作品へのステージングや振付、CM・ミュージックビデオの振付や出演など、幅広いジャンルでも活動する。

URL http://www.idevian.com/

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深井順子
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日髙啓介
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鯉和鮎美
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高橋義和
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澤田慎司
 

以上、FUKAIPRODUCE 羽衣


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平佐喜子
Ort
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谷山知宏
花組芝居
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榊原毅
三条会
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山崎皓司
快快
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井上みなみ
青年団
 

    


助成:一般財団法人地域創造
平成27年度 文化庁 文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業
(池袋/としま/東京アーツプロジェクト事業)